環境科学科
田園資源活用系

健全な田園環境の保全?形成に資するため、田園を取り巻く土壌圏?水圏?大気圏のエネルギーや物質循環に関する基礎的知識の学習と田園資源を活用した低炭素社会の構築に資する技術やシステムについて教育研究を行っています。
環境利水学分野
田園地域における水循環および再生可能エネルギーの利活用を念頭に、栽培?気象、圃場立地等の条件に応じて適切かつ持続可能なエネルギー計画や利水施設設計について研究を行います。
大気環境学分野
気象現象、気候変動及び植物に関わる微気象とその特性について解明するとともに、地球温暖化?酸性雨など大気環境に関わる問題について研究を行います。
農地環境学分野
農地における土壌中の熱?物質移動を解明し、自然環境と調和した農地の生産環境の管理技術と農業生産性の向上について研究を行います。
土壌環境学分野
農林地域における土壌圏の物理学?化学?生物学的特性について解明し、土壌の持続可能な生物生産量?環境容量、土壌圏の環境問題と改善方法などについて研究を行います。
研究クローズアップ
土の中の熱?物質の流れを把握し、評価し、制御する(田園資源活用系 農地環境学分野)

百瀬 年彦 准教授
農地環境学研究室は、人と農地との関わりに問題意識を持ち、環境と調和する農業の実現に向けて適切な農地管理のあり方を根源から探ります。
地球誕生から長い年月を経て、岩石は風化作用を受けて土になり、その土は豊かな生態系を育みました。土の物理的?化学的環境の不均一化と生物の多様化とが進むなかで、土は自らの肥沃度を高めつつ生命のつながりを支えてきたと考えられます。その肥沃な土をもとに、農地が作られました。そこでは現在、主として単一の作物が栽培され、化学肥料や農薬が使われ、重機が用いられるなど、系を単純化する方向で農業が営まれています。系の複雑さが増すとともに肥沃な土が形成された過程を考えれば、現在の農業が、農地にさまざまな問題を引き起こすことは、当然の結果と言えるのかもしれません。
適切な農地管理のあり方を見いだすため、土の中の熱?物質移動に着目しています。土の中では、太陽エネルギーを原動力として、熱?物質が絶え間なく流れ、その流れは地中環境を刻々と変化させています。農地での流れが自然界のものとかけ離れていけば、農地には自然界と大きく異なる環境が形成されるわけです。適切な農地管理とは何なのかー農地の熱?物質の流れを自然界に近づけることだというビジョンを持ち、学生とともに研究を進めます。
研究室の学生は、農地環境を構成する多くの要素から1つを選択し、野外計測や室内実験を通じて研究を行い、土の中の熱?物質移動の把握、評価、制御につなげます。実験装置や計測センサーについては、測定原理をより深く理解することを目的として、できるだけ自作してもらいます。そのために必要なノウハウは、必要に応じてひとつひとつ伝えていきます。
地球の歴史を踏まえれば、土が持つ極めて重要な機能とは地球の生命をつなぐことだと思います。人の生命のみをつなげようとする単眼的思考の農業からの脱却を目指し、土の中の熱?物質の流れを自然界に近づけた農地づくりに取り組みます。
日本“最高”の場所で地球を観る(田園資源活用系 大気環境学分野)

皆巳 幸也 准教授
標高3,776メートルの国内最高点である富士山頂は、「頭を雲の上に出し」と歌われるとおり上空の大気に触れることのできる貴重な位置にあります。そこでは、近隣にある汚染源からの影響は受けず、むしろ地球規模で大気中を輸送されてくる様々な物質の様子を明瞭に捉えることができると期待されます。実際に、昨年の夏は九州の桜島での噴火により放出された二酸化硫黄(亜硫酸ガス)などの火山ガスが、また以前にはシベリアの森林火災で発生したと思われるススが検出されました。更には、いま話題となっているPM2.5の動向についても、特に大陸域から輸送されてくるものの影響を調べることに着手しています。
しかし、富士山頂が常に雲より上にあるわけではありません。例えば、山頂に笠雲が懸かっている、ということもあるのです。笠雲が様々な形で姿を現し、それを見て人々が今後の天気を経験的に予測していたことも、特に富士山では著名です。さて、そのような状況にある時の山頂は、また違った研究の場となります。それは、先に挙げたような色々な物質が、今度は霧粒(雲粒)として、つまりは水に溶けた形で浮かんでいるのです。そこでは、いわゆる酸性雨が形成されるのと同じことが起こっており、そうしたメカニズムを解明する絶好の機会となるのです。右上の写真で私の奥に見えるのは、そのための“雲をつかむ”装置です。
山頂は酸素が地上の70パーセントほどしかなく、すぐに息切れしてしまうハードな場所ですが、満天の星や果てしなく拡がる雲海など、高い山ならではの風景も欲しいままにできる“最高”の場所でもあります。そんな絶好の環境で、地球の大気を肌で感じてみませんか?